PART5

・・シンガポールの大晦日・・

 1月2日が仕事や学校の始まりの日ということはわかったのですが、それでは日本の正月に相当する日ってあるのかな?あるのなら、いつかな?と思いました。その答えは1月のシンガポールの町じゅうにありました。旧暦の正月を迎えるために街中が活気にあふれるのです。シンガポール国民の70%が中国系で占めるというこの国にとっては、チャイニーズニューイヤー(旧暦の正月)こそがお正月だったんです。

 旧暦(太陰暦)の正月は毎年違うのですが、ほぼ1月〜2月にあたります。旧正月の前日は、まさに大晦日の雰囲気を味わえるし、旧正月の元日〜数日は、町がゴーストタウン状態になるのです。

 それはさておき、太陽暦の大晦日12月31日。はじめてシンガポールで過ごす年越しです。いつもなら毎年恒例のようにコタツにみかん、年越し蕎麦、テレビはNHKの紅白歌合戦。そんな、あたりまえだったことが、今年はまったく違う年越しでした。

 当時まだ家ではNHKを見ることが出来ない上に、日本のようなみかんもない。もちろんコタツなんて不要。それどころか扇風機を回したり、クーラーをかけたりして過ごす暑い夜でした。どうしても、蕎麦だけは食べたいと思い、当日の昼に日系スーパーで購入してきたので、自宅で そばつゆを作り天ぷらを揚げて、汗をかきながら食べるだけという、大晦日を過ごしました。
 12時に近づいたけれど、もちろん除夜の鐘なんて聞こえることもなく、1月1日となりました。ふと家の窓から外を見たのですが、爆竹を鳴らす人もいない(シンガポールは爆竹禁止だったと知らず)静かで、代わり映えのないものでした。

 実家に電話したのですが、電話をかける人が大勢いたようでつながらず、さっさと寝てしまいました。考えてみたら、1時間の時差があったのですよね。
 朝起きても、御節料理を作らなかったために、やはり正月気分にはならず、とても物足りませんでした。

 繁華街はゴーストタウンなのかなあ? と考えていると、ちょっとだけウキウキしてきたので、早速外出しようとしていたら、突然、夫の友人から電話がかかってきて、急遽ドライブへ連れて行ってもらえることになりました。なんだかワクワクしてきました。



・・シンガポールでの元旦・・

 友人の車に乗って、さっそく街の中へ向かいました。道路状態は普通の祝日のような感じで、「日本での元旦の都心」のようなゴーズタウンではありませんでした。住んでいる所がイーストだったので、イーストコーストパークとラクサ(シンガポールカレーの麺)で有名なカトン地区へ行くことになりました。

 もう、すでに昼だったので、さっそくラクサを食べに行く事になりました。カトンという場所は「ラクサが美味しいと評判の場所」のため、あまりにも同じような屋台が連なっていて、どのお店へ行こうか迷ってしまいました。元旦ですが、閉まっている店はなく、昼時間だったので、どこの店も、それなりに込んでいました。

 その後、イーストコーストパークへ行きました。マラソンしている人、サイクリングをしている人、中には凧揚げをしている人もいました。「こっちでも、凧揚げするんだ。」でも、正月だからやっているのではなく、特にする時期は決まっていないそうです。

 それから、私の希望でショッピングセンターへ連れていってもらうことになりました。せっかく車があるのだから・・スーパーで、重いものやら、かさばるものなどを買いたいと思ったからです。でも、ショッピングセンターの駐車場へ入るのが行列で大変でした。スーパーで買い込んだ後は、電気屋で自宅のパソコンへつなげる印刷機も購入しました。

 急に、とても遅いけれど、年賀状を自宅で作成したくなったのです。そうすれば、少しは正月気分が味わえると思ったからです。年末に年賀状をかかなかったことが、正月への盛り上がりに欠けた原因の一つだと思いました。今までは毎年面倒で、やりたくないことだったにもかかわらず。もちろん、インクや用紙も購入し、自宅へ帰ってから、デジカメで撮った写真を入れ、早速年賀状を作り始めました。

 印刷機を買ったのはいいけれど、英語の説明書というのがやっかい。でも、機械の使い方は、日本のと変わりなかったので使えるようになり、2日後には出来上がり、日本へ送ることができました。
その後「エアメール年賀状」をくれた人はわずか。でも、少しは正月気分を味わうことができました。



・・1月2日、羊水検査・・

 元旦に年賀状を書いて、少しは正月気分になり翌日をむかえました。いよいよ羊水検査の日です。血液検査の結果、お腹の子供がダウン症の疑いがあるということで、産院から電話があり受けることになったのです。

 羊水検査とは、赤ちゃんを傷つけないように超音波断層装置で慎重に位置を確認しながら、お腹の上から注射針を直接さして、羊水を10〜20ccほど採取して調べるものです。

 羊水中には、赤ちゃんの細胞がふくまれているので、その胎児細胞を培養することで、胎児の性別判定や、Rh式血液型不適合妊娠の重傷度、胎児が十分に成熟しているかどうか、先天異常や染色体異常(ダウン症候群)がわかるのです。

 もちろん、すべての妊婦がこの検査をおこなうわけではなく、高齢出産であるとか、私のように血液検査(トリプルマーカースクリーニング検査)を行い、染色体異常が高い可能性がある場合のみのようです。なぜならば、この検査による流産率が0.3パーセントほどあり、感染症の危険があるという、リスク付きの検査だからです。

 羊水検査する妊娠週が限られていることも初めて知りました。先天代謝異常のための検査は14週目。わたしのように、染色体異常を調べるためには16〜20週の間。この時、私はちょうど16週目でした。

 この検査ができる病院はシンガポール国内でも限られているそうです。通っている産院のドクターから国立大学病院へ行きなさいという指示がありました。

 着いたら、まず羊水検査をするにあたって、もしこの検査によって胎児が死亡することがあっても自己責任であるというような内容が書かれている同意書に、夫婦それぞれサインすることを求められました。

 もちろん全部英語で書かれているので、私自身サインするのに、かなり勇気が必要でした。だいたいの内容は夫が訳してくれたのですが・・。でも、サインしないと、先にすすめません。なんだか、すごい検査をするんだという気持ちが出始めてきました。



・・羊水検査の結果・・

 羊水検査自身は、お腹に針を刺すだけで、痛みもそれほど感じることなく、短時間で終了しました。でも、その後お医者さんから、「今日、明日は、なるべく寝た体制をとっていなさい。今日を含め3日間は外出しないで、仕事している場合は5日間欠勤すること」など、とにかく安静にしていなければならないと言われました。後から、聞いた話によると、日本では、羊水検査をしたらその日一日は入院するそうです。

 というわけで、もちろん帰りはタクシー。自宅へ帰っても、とにかく寝た体制で、ということなので、夫がいると、ちょっとでも立ち歩いているだけで怒るし、もちろんキッチンにも立てませんでした。元気なのに、横になっていなければならないという、暇をもてあまして退屈な主婦生活を数日間過ごしました。

 羊水検査の結果は10日後、担当の産婦人科医師から連絡が入ると言われました。その言葉通り、約1週間後に担当ドクターから連絡がありました。お腹の子供にダウン症候群の疑いはない、という嬉しい検査結果。それから、産まれる子供の性別が知りたいか聞かれたので、知りたいと答えると、男の子です。と教えてくれました。

 私には妹がいて、母も妹、という女系だったので、正直言って、お腹の子は女の子のような気がしていたために、少々期待はずれでした。でも、夫のほうは兄弟5人とも男という男系。産まれてくる子が男の子ということで、大喜びでした。

 まだまだ早いけれど、名前を考えなければなあ。と思い始めました。染色体を調べた上での性別判断だったので、産まれてくる前、超音波断層による判定よりも結果は明らかです。でも、単純に日本の男の子の名前というわけにはいかず、中国語読みでも日本語読みでも違和感のない名前、通じる名前を考えなければならないので、いろいろと悩みました。

 羊水検査の1週間後、良い検査結果も聞きお腹の子供の性別もわかり、安静期間も過ぎて気分も気持ちも晴れたので、久々にショッピングへ出かけることにしました。まずは徒歩距離からということで、日曜日の朝良く行く近所のマーケットへ、夫と一緒に買い物することになりました。



・・旧正月直前のシンガポール・・

 スーパーは、しばらく見ていない間に、チャイニーズニューイヤー用の、色々な物であふれかえり、活気付いていました。はじめてだったので好奇心いっぱいで見て回りました。

 なにしろ、いままで見たことがない 赤や金色のキラキラしたものがたくさん飾られていて華やいでいるのです。雰囲気がぜんぜん違いました。中国語の陽気な音楽が流れ、店の前にテントが張られ、赤い蓋で透明ケースに入ったビスケットなどのお菓子やジュースがあふれかえっていました。

 しばらくすると、私はその人ごみの中で、気分が悪くなりはじめてきました。少々貧血気味になり、立っていられなくなってしまいました。夫が一緒だったので、よかったのですが、1人だったら大変なことでした。仕方がないので、買い物はやめて、マーケットの前のベンチで休憩することにしました。今までになかったことだったので、気をつけなければいけないなあと思いました。

 自宅へ帰ってから、産院でもらった薬を思い出しました。初診日からすでに、ビタミン剤、カルシウム剤、貧血気味だということで、特別に鉄剤も処方されていたのです。そのときまでは、毎日薬漬けでいいのかという不安もあり、飲んだり、飲まなかったりしていたのですが、でも、とにかくお腹の子どものために、きちんと飲み続けなければいけないと思いました。

 次に受診した時は、それに加えて、妊婦用粉ミルクの試供品をもらいました。赤ちゃんではなく、妊婦のための粉ミルクなんて始めて知りました。それがこちらのスーパーでは市販されているそうなのです。

 まず、試しに・・ということで、その場でお湯に溶かして、手渡されました。飲みなれている牛乳に比べると、あまり美味しいものではありませんでした。でも、この前具合が悪くなったものだから、夫が強く主張し、さっそくスーパーで購入。そのままでは飲みにくかったので、スープにしたり、ミロに加えて飲むことになりました。



・・19週目、胎動を感じるようになる・・

 羊水検査をしたので、性別がはっきりと男だとわかり、赤ちゃん用品売り場へ行っても、ついついそのことを意識しがちになったある日、そろそろ胎動を感じないかと聞かれ、気にし始めるようになりました。

 でも、「お腹を蹴られる」という感覚がなかなかつかめませんでした。それでも、少し落ち着いて、横になっていると、なんとなく胎動のようなものを感じるようになりましたが、これが胎動なのか、そうでないのか、自分自身 疑心暗鬼なところがありました。

 「胎動」だと自分でしっかりと自覚したのは、その2,3週間後で、振り返ってみて、「19週目のあれは胎動だったんだ」とわかったのでした。

 母から、近いうちに父と二人でシンガポールへ行くことになったと連絡があり、いろいろと話をしました。日本では、妊娠5ヶ月目(シンガポールだと4ヶ月目)の戌の日に腹帯を巻くのだそうです。でも、暑いシンガポールで毎日そんなものを巻いていたら、あせもになって、痒くて仕方がなくなってしまうといけない。ということで、通気性がよくて、お腹をきちんと支えてくれるガードルを捜して買ってきてくれることになりました。

 それから、食事のことを言われました。お医者さんからもらっている、カルシウム、鉄、ビタミン剤は、しっかりとること、その他、にぼしなどの小魚、牛乳、カルシウムは、とくに気にして しっかりとらないといけないという話。

 最後に、欲しいものがあれば言いなさいと言われました。とにかく、日本の食べ物が恋しかったので、手軽に食べられるお菓子系では、おせんべ、酢昆布、食品では、ふりかけ、カレールー、マヨネーズなど いろいろなものを書き出してお願いしてしまいました。

 その数週間後、日本の東京、寒い真冬からシンガポールへ、旧正月の少し前で気温差も30度ほどあるというこの時期に、両親はやってきました。今回はツアーでの参加なので、ホテルまでの送迎とホテルがセットで、観光のみが入ってないという、パッケージ。たった3泊4日。でも、わたしは二人会えるのが嬉しくて指折り数えて待っていました。


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メイナイの
シンガポールで育児
 
PART1
はじめに…
序章
結婚式までの1ヵ月
結婚式の数日前
 
結婚式の朝 
夫の家での結婚式
 
中華レストランでの披露宴

PART2
結婚披露宴 2
披露宴が終了して
妊娠発覚

日本へ帰ろう 
日本の秋は寒かった
滞在中楽しかったこと


PART3
8週目のできごと
8週目のできごと(続き)
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GPから紹介された産婦人科
シンガポールの大病院
初めての産婦人科検診

PART4
従兄弟紹介の産婦人科
産婦人科の隣 
妊婦のはまった南国フルーツ
妊娠初期の食べ物
シンガポールのクリスマス
妊娠16週目、血液検査の結果

PART5
シンガポールの大晦日
シンガポールでの元旦
1月2日、羊水検査
羊水検査の結果

旧正月直前のシンガポール
19週目、胎動を感じるようになる

PART6
両親がシンガポールに3日滞在
旧正月前のチャイナタウンとクラークキーの夜
羊水検査から6週間後の検診
チャイニーズニューイヤー
元旦と2日目


PART7
夫婦でシンガポールPRを取得
25週目、メールで知り合った妊婦友達と会う
フリーマーケット巡り
日本人の母親学級
32週目(9ヶ月目)検診で
妊婦最後の35週目

PART8
5月14日アルバニア病院へ入院
出産のための入院中
5月15日午前4時28分出産
全身麻酔による帝王切開
出産直後の1日
子供の名前

PART9
5月16日、産後1日目
授乳の量、ミルクの量と間隔
入院中
手術後の体
同室の人々
入院6日目に退院

PART10
ベビーブック
予防接種

退院と精算
日本の母の滞在
4ヵ月頃までのミルクの飲み
おむつの話

  
PART11
離乳食の話
寝返り、おすわり、つかまり立ち
赤ちゃんとの初海外旅行
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